教員ピックアップ

12月11日

織作 峰子
[写真学科長 教授]

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織作 峰子[大阪芸術大学 写真学科長 教授]  担当授業:卒業制作

写真家。京都文教短期大学児童教育学科初等教育専攻卒業。1982年大竹省二スタジオ入門。1985年、1986年には全国二科展入賞。独立後は、世界各地で写真展を開催しているほか、最近は写真表現の可能性を求め、異素材と写真のコラボレーションを試みる展覧会を開催。日本広告写真家協会理事、日本写真芸術学会評議員としても活躍している。

 


 

2023年12月11日

北國新聞で取り上げられました

 
2023年11月28日の<北國新聞・小松特別号外>で石川県小松市出身の織作峰子学科長が「五感を磨いてくれた場所 おしゃれでシャイな小松人」として取り上げられました。
今年9月に金沢21紀美術館で個展「光韻(こういん)」を開催。
2024年3月16日に金沢~敦賀駅間が開業する北陸新幹線に向けてのラッピング紙面の号外で小松市特集の一面となり、織作先生の故郷での思い出が記事になっています。

 

掲載記事はこちらでご確認いただけます。(PDF)

 


2023年10月12日

写真展「光韻」が、金沢にて開催されました

 

通信教育部長/写真学科長の織作峰子教授の写真展「光韻」が、2023年9月5日~10日、石川県金沢市の「金沢21世紀美術館」と「石川県政記念しいのき迎賓館」にて開催されました。石川の伝統工芸である金箔と最新のインクジェットプリント技術を組み合わせ、独自の技法で新たな写真表現を追求する織作先生。奥深い金色の光を放つ作品が来場者を魅了しました。

 

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第一会場の「金沢21世紀美術館」で展示されたのは、石川県にゆかりのある人物のポートレート作品。漆芸家で人間国宝の大場松魚氏、相撲力士の遠藤関、県知事の馳浩氏など、政治や経済から文化芸能、スポーツと多彩なジャンルにわたる104人の肖像が、金箔ならではの気品ある輝きの中に浮かび上がります。

これらの作品で使用したのは、ユネスコ無形文化遺産である「縁付金箔」。手すき和紙に薄く伸ばした金を挟み、さらに打ち延ばしていくという熟練の職人技から生まれたやわらかな光沢と温もりで、作品に独特の存在感を添えています。

「金箔は、暗い部屋でもロウソク1本の明かりだけで美しく見える不思議な支持体。箔を用いることで、写真の新たな可能性が広がりました。世界各国の人が訪れるこの金沢21世紀美術館という場所で、石川が誇る伝統工芸と、写真というアートの両面の魅力を発信できるのは嬉しいですね」と語る織作先生。連日多数の来場者が訪れ、じっくりと展示に見入っていました。

 

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400年の伝統を受け継ぐ「縁付金箔」にプリントされた作品。11点にモデルの人物との思い出や撮影時のエピソードを綴った織作先生の文章が添えられ、より見応えのある内容に

 

第二会場の「石川県政記念しいのき迎賓館」には、風景や植物を金箔や銀箔、プラチナ箔にプリントした作品が並びました。兼六園の雪吊りや輪島の千枚田など石川の景観をはじめ、日本各地の風景や四季の花が、金銀の箔の幻想的な光をまとい、見る人を惹き付けます。

「単なる金色や銀色の紙ではなく、本物の純金や純銀、プラチナなどを用いることに意味があります。やり直しがきかない高額な箔は、通常のプリントとはまったく違う心構えが必要。そうしたリスクを引き受け、緊張感をもって臨むことも、ものづくりの精神として大切だと考えています」(織作先生)。

 

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第二会場には、六曲一隻の金屏風やアクリルボックス型など、既存の写真の枠を超えたアート作品も展示

 

今展覧会にあわせて、こうした日本の美しい自然や風景をおさめた箔作品の写真集「光韻」も出版されました。大阪・関西万博の公式ロゴマークをデザインしたアートディレクターのシマダタモツさんが、写真集のアートディレクションを手がけ、展覧会の会場構成も担当。織作先生の作品から伝わる世界観が、洗練されたデザインや空間で体現されていました。

 

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装丁やブックケースなど細部までアーティスティックに仕上げられ500冊限定の写真集。購入者の方に織作先生がその場でサインを入れる場面も

 

9月8日には、写真学科教授でもある写真評論家の飯沢耕太郎先生とのトークイベントが開催され、織作先生のこれまでの歩みや作品への思いが語られました。石川で生まれ育ち、ミスユニバース日本代表に選出されたのを機に写真の世界へ。報道や広告など幅広い活躍を経て、アートとしての写真作品制作に注力するように。それは、石川の伝統工芸や自然美に培われた感性や芸術への意識が次第に形になったものだといいます。

飯沢先生が「フォトグラフは本来“光で描く”という意味で、絵画的な表現もある。伝統的な美意識と現代の最新技術が融合する箔の作品は、まさに現代のピクトリアリズム(絵画主義)の最先端」と絶賛すると、織作先生は「写真は現実を写すという従来の概念を超えて、絵画に匹敵する素晴らしい芸術であると伝えたい」とコメント。さらに「琳派や浮世絵のような余白をいかした構図は、意識して作ったのではなく自分の中から自然に生まれたもの」(織作先生)、「一瞬でベストな表情を捉えるポートレートは、新鮮な素材をいかす料理のよう」(飯沢先生)など、和やかな中にも熱い写真談義が繰り広げられ、大勢の観客が熱心に耳を傾けました。

 

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トークイベントは立見の方も多数出るほどの人気。メイキング映像で撮影風景や金箔職人の作業現場、デジタル印刷の様子なども紹介された

 

織作先生に、今後の抱負と、写真を学ぶ人へのメッセージを伺いました。

「これからも研究を重ねて『箔フォトグラフィ®』と名付けたこの技法を発展させながら、石川が生んだ画人・長谷川等伯のようなモダンさのある作品を制作し、海外にも発信していきたいと考えています。

今はデジタルカメラやスマートフォンで気軽に撮影し、枚数を気にせず撮って気に入らないものを消せる時代。でも、何が撮りたいかをじっくりと考え、一枚一枚大切にシャッターを切ることで、自分が本当に表現したいものが見えてきます。自分自身と対話しながら、被写体に向き合い、自分にしか撮れない写真を追求してほしいと思います」