お知らせ

10月26日

美術学科卒業生の市本菜々美さんが、宝塚市立文化芸術センターでの「アニマート-22人の幕間-」展に出展

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市本 菜々美さん[美術学科2016年3月卒業]


 

通信教育部美術学科を卒業後、通学課程での学びを経て、今春から新たな一歩を踏み出した市本菜々美さん。2023年8月に宝塚市立文化芸術センター(兵庫県)で開催された、大阪芸大出身の若手作家によるグループ展「アニマート-22人の幕間-」に出展し、注目を集めました。そんな市本さんのこれまでの歩みと作品への思いをご紹介します。

 

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文系の大学を卒業した私は、アメリカの小学校で教育アシスタントを経験し、帰国後は国内の物流会社で事務職に就いていました。ところがある時大きなケガをしたのをきっかけに、「人はいつどうなるかわからない、本当にやりたいことをしよう」と決心。もともと興味のあったアートの世界へ飛び込むため、大阪芸術大学通信教育部美術学科に入学を決めました。

表向きの目標は美術教員免許の取得でしたが、通信教育部で学ぶうちに「絵画とは何か、自分とは何か」という問いに直面したのです。絵を通してもっと自分と真剣に向き合いたくなり、通信教育部を卒業後は通学課程の美術学科へ編入学することに。制作に打ち込む中で、絵を描くことは私にとって自己を確立する手立てだとあらためて認識しました。

 

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通信教育部での卒業制作スクーリング

 

通学課程では植物をモチーフに、「明日」「次」「生きる」といったポジティブなエネルギーを絵画として表出することを追求。卒業制作では200号の作品を4点描き上げ、学長賞を受賞することができました。さらにその後も、美術学科副手として大学に勤務しながら作品制作に励み、展覧会などに出展して作家活動の幅を広げながら、写真や版画など様々な芸術にもふれてきました。大阪芸大の豊かな自然と多彩なアートに囲まれた環境や、自由でのびのびとした雰囲気があったからこそ、多くの刺激を受け、やりたいと思ったことに前向きに取り組むことができたのだと思います。

 

 

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(写真左)通学課程の卒業制作では、宝塚市立文化芸術センター館長も務める美術学科客員教授の加藤義夫先生からのアドバイスも

(中)2019年度大阪芸術大学グループ学生作品オークションへの出展作品

(右)200号の大作に挑んだ卒業制作で学長賞を受賞

 

今春から大学を離れて刺繍会社に就職。企画の仕事のかたわら制作を続ける中で、大阪芸大を卒業した作家22人が集う「アニマート」展に出展の誘いをいただきました。このグループ展は、作家一人ひとりが今までの殻を破って新たな作風やステップにチャレンジするのがテーマということで、私も新しい技法に挑戦。街中で採取した植物や種を写真に撮って版画作品を制作しました。

この作品では、版画にはふつう使用しない雁皮紙というごく薄い紙を用いて、はかなく消えそうな風情の中に息づく強さを表現。さらに版画をアクリル板に乗せ、「自然に還る植物や紙」と「自然に還ることのない合成樹脂」という組合せで、現代社会に対するメッセージを託しています。この展覧会のために、押し花をコラージュした自分の名刺も1枚1枚手作りしました。

ありがたいことに出展した作品の半数が売れて、展覧会場である宝塚市立文化芸術センターの学芸員の方にも購入していただき、とても嬉しかったです。作品を認めていただき励ましの言葉もいただいて、皆さんの期待と応援を裏切らないよう、あらためて良い作品を生みだしていかなければと気持ちを新たにしました。最近は植物学者や音楽家など美術以外の分野の方々の自然に対するまなざしにも触発されており、これからも自分らしい向き合い方で植物というテーマを突き詰めていけたらと思っています。

 

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 グループ展「アニマート-22人の幕間-」への出展作品。植物を撮影して転写した版画を、花や花粉を思わせる黄色、水や空の青、風をイメージした白などのアクリル板と組み合わせている

 

振り返ってみると、通信教育部で絵を描くことの魅力に惹きこまれ、面白いと思うことをただ追いかけているうちに、いつのまにかここまで来たというのが実感です。通教生時代から師事してきた髙田光治先生(美術学科教授)は、一貫して同じ教えを説いてくださっているのですが、その時々で自分の吸収の度合いがまったく違っていました。完成間近の卒業制作を「一からやり直し」と言われるなど厳しい指導も印象に残っていますが、年数を重ねるごとにより深く教えを理解することができ、成長できているように思います。

通信教育部で学んでおられる方には、大変ではあっても途中でやめてしまわずに、できれば卒業してもずっと何かの形で続けていっていただきたいです。長く続けるからこそ理解できること、見えるものがあり、自分の世界も広がっていくのではないでしょうか。

 

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「アニマート-22人の幕間-」展が開催された宝塚市立文化芸術センターのキュレーターである大野裕子さんに、お話を伺いました。

 「このグループ展では多彩な作品が展示され、大阪芸術大学の学びの幅広さや、作家の皆さんの個性の豊かさを感じました。中でも市本菜々美さんの作品は、コンセプトが明確で、作家の思いやエネルギーがしっかりと伝わる素晴らしいもの。作家を応援したいという意味も込めて、私自身も個人的に作品を購入しました。市本さんは海外での滞在経験や、働きながら通信教育部で学んだ経験もあるとのことですが、一見回り道に思えるそうした体験から得たものも大きく、それが時間をかけて醸成され、作品にも表れているのではないでしょうか。

当センターは広いガーデンの自然と文化施設を融合して、生活の中にアートを取り入れたり、アート的な考え方で生活を見つめたりする楽しさを提案しています。作品を自ら制作するだけでなく、作品を間にして対話し、思いを共有して、人とつながりあう。そんな視点からも幅広くアートに親しんでいただければと思います」

 

 【宝塚市立文化芸術センター】

■所在地:〒665-0844 兵庫県宝塚市武庫川町7-64

■TEL. 0797-62-6800

■休館日:水曜日(祝日は開館)

※年末年始(12月29日~1月3日)、その他施設点検などにより臨時休館する場合があります。

■開館時間:センター・屋上庭園:10:00~18:00/メインガーデン:10:00~17:00

■文化芸術センターへの入館は基本無料。展覧会や催しによっては、一部会場が有料となります。

 

さまざまな催し、活動の詳細は、センター公式サイトからご覧ください:https://takarazuka-arts-center.jp/