輝く卒業生

9月1日

デザイン学科卒業生の中野友紀子さんらがグループ展『「 」展 ―交差するかたち―』を開催

 

2026年6月6日~7月5日、滋賀県米原市の醒井(さめがい)木彫美術館で、通信教育部卒業生を中心としたグループ展『「 」(くうかん)展 ―交差するかたち―」が開催されました。在学生も含めて14名が参加。絵画、写真、陶芸、金属工芸、インスタレーションなど、それぞれの個性が光る多彩な表現を披露しました。

今回のグループ展は、代表の一人である中野友紀子さん(デザイン学科卒・写真学科卒)と醒井木彫美術館との長年のつながりから実現したものです。「醒井は母の実家があり、幼い頃からよく訪れていた思い出深い土地。5~6年前から美術館の作品解説づくりを手伝ってきた縁もあり、いつかここで展示をしたいと思っていました」と中野さん。大阪・阿倍野で長年続いてきた通信教育部の有志展『塊展』が2025年に終了したことをきっかけに、「次は醒井で」と仲間たちと意見が一致。新たな発表の場として本展が企画されました。
 

会場となった滋賀県の醒井木彫美術館

 

中野友紀子さん[デザイン学科卒・写真学科卒](写真右)らが中心となって展覧会を企画

 
展覧会のタイトルには、異なる作品が一つの空間に集まり、互いに影響し合うことで、新たな意味が生まれていくという思いが込められています。「美術館で展示することの意味も大きいです。小さな私設美術館ですが、ロケーションが素晴らしく、空間設計も工夫されています」(中野さん)。今回の展示ではあえて窓をふさがず、地蔵川の清流を望む風景と作品を一緒に楽しめる構成に。観光客も多く訪れ、いつもの展示とは異なる場所で作品を見てもらえたことは、出展者にとっても大きな励みになったそうです。
 

自然光と空間の余白をいかした展示。窓辺に広がる地蔵川の眺めが作品と響き合う

 
初めて醒井を訪れた出展者が多かったことから、今回は過去作品の出展も可能としました。一方で、醒井の町並みや自然にふれ、新作を制作した作家も。中山道の宿場町として紡がれてきた歴史や、春の桜、夏の梅花藻が彩る水辺の景観など、それぞれが感じた醒井の魅力を手がかりに、独自の表現へとつなぎました。
中野さんが出展した写真作品は、幼少期から大切にしてきたクマのぬいぐるみがモチーフ。「福岡に住んでいた子どもの頃、醒井までの長距離移動が心細く、いつも抱きしめていたぬいぐるみは、家族のような存在。椅子に座らせ、さびたドラム缶など朽ちていく風景の中で撮影しました」。土地の記憶と自身のノスタルジーが重なる作品となりました。
 

醒井に関わる年月をモノクロ写真で表現した中野さんの作品「時」。実物のぬいぐるみも一緒に展示

 
会場には、様々な素材や技法を用いた作品が並びました。岡村久美子さん(美術学科卒・写真学科在学)は、フラワーデザイナーとしての経験を生かし、プリザーブドフラワーと油画を組み合わせたインスタレーションを制作。写真学科に再入学して新たな表現を模索しており、「さらに多様なメディアでテーマを深めたい」と話します。
 

立体と平面で時間の流れを表現した岡村さんの作品「明日への記憶」

 
滋賀県在住の宮嵜浩さん(美術学科在学)は、宿場町・醒井から着想した文化の交流をテーマに、金屏風にインクジェットプリントを施した作品を制作。滋賀で初めての展示が叶った喜びが、今後の展示や企画への意欲の新たな原動力になったそうです。

 

宮嵜さんの金屏風作品「醒井幻影往来〜紫陽花双鶏美人図屏風〜」

 
正元嶺至さん(工芸学科卒)は、鉄鋼の造形作品を出展。黒い酸化膜をまとわせた鉄の質感が、木彫の作品を中心とした美術館の空間に独特の存在感を加えていました。毛糸を用いた作品を制作したniyaさん(文芸学科在学)は、「自然光が入る美術館での展示は、閉ざされた展覧会とはまた違う新鮮さでした」と振り返ります。今回キュレーターも務めたmikaさん(美術学科卒)は、醒井の風景を思わせる梅花藻をイメージしたアクリル画を展示し、「企画展示の裏方としても頑張りたい」と、制作に加えて展覧会を支える活動への思いを新たにしていました。
 

(写真左)正元さんの作品「少女 頭部」。(中)niyaさんの作品「糸あそび」。(右)mikaさんの作品「薫風」

 
参加者からは、「美術館の場所や雰囲気が素晴らしかった」「表現方法も環境も違う出展者同士、和気あいあいと楽しめた。搬入・搬出時の一体感も嬉しかった」「ここでの一カ月が一生の思い出になった」「他の作家と交流してたくさんの刺激を受け、創作の励みになった」といった声が寄せられました。美術館スタッフや地域の方々による温かなサポートも、展覧会を支える大きな力となったそうです。出展者の多くは「来年も参加したい」と意欲的で、次回は2027年7月~8月の開催を予定しています。
 
「年齢も仕事も違う人たちと出会えることが、通信教育部の魅力。学科も違うから、表現の幅も自然に広がります」と語る中野さん。仲間との交流を楽しみながら、教員免許の取得によるスキルアップも実現し、仕事と両立しながら充実した制作活動を続けています。「先生方も優しく、積極的に質問すればどんどん吸収・成長できます。展示の機会も自分たちでつくれますし、学びたい気持ちがあれば、どんな年齢からでも表現は深まります。ぜひ、色々な人とつながってほしいです」
 


 

醒井木彫美術館

今回の展覧会が行われた醒井木彫美術館は、滋賀県米原市・醒井宿に佇む木彫作品の私設美術館です。地元出身の彫刻家・森大造を中心にした木彫作品が常設展示され、木の質感と手仕事の温もりが伝わる作品が並んでいます。傍らに地蔵川が流れ、夏には梅花藻が揺れる風景がひときわ美しく、観光スポットとしても人気。歴史ある宿場町の自然とアートが調和する美術館です。