上掛周平さん[写真学科2023年3月卒業]
通信教育部写真学科卒業生の上掛周平さんが、歴史ある写真公募展「APAアワード2025」にて審査委員賞を受賞しました。2025年2月22日~3月9日、全入賞入選作品を紹介する写真展「APAアワード2025 第53回公益社団法人日本広告写真家協会公募展」が東京都写真美術館で開催され、上掛さんの受賞作品が展示されました。
「APAアワード」は、広告写真や新しい写真表現の発掘・評価を目的として1961年から開催されている公募展です。テーマに沿って自由な発想と写真表現で競い合う「写真作品部門」では、今回991作品・計3039枚の応募があり、厳正な審査の結果、上掛さんの作品「核シェルターが地下に眠る町」(8枚組作品)が「審査委員 大山顕賞」を受賞しました。
ロシア・ウラジオストクの街並みと地下の遺構を対比させ、アナログとデジタルを組み合わせて歴史と現代社会を見つめた受賞作品
上掛さんは今回、写真学科長の織作峰子先生に勧められたのがきっかけで応募。「APAアワード」初挑戦で受賞を果たしました。
「作品は、コロナ禍直前の2019年にロシアのウラジオストクで撮影したもの。現在は美しい街並みが広がっていますが、地下には旧ソ連時代の軍事施設が存在しています。地上の風景をカラーとモノクロのフィルム、地下施設をデジタルカメラで撮影し、過去と現在、アナログとデジタルの交錯を試みました」(上掛さん)
今回のテーマである『愛と平和』と審査委員の傾向を考え合わせて作品を編集。大学での学びとこれまで積み重ねてきた制作経験をいかし、出品規定の中でいかに自分らしく面白いものを表現するかを追求したそうです。
「審査委員の顔ぶれから、自分の作品を選んでもらえるとしたら、ライターとしても活躍されている大山顕さんだろうと考えていました。授賞式後に大山さんとお話した際、今社会で起きている出来事をとらえて問題提起する唯一の応募作品だったと評価していただいて、非常に嬉しかったです。」
3月1日には同美術館1階ホールにて授賞式が行われた
「APAアワード2025」入賞・入選作を収録した写真集『年鑑 日本の広告写真 2025』(玄光社)にも掲載 https://www.genkosha.co.jp/book/b10132107.html
一般の大学を卒業して京都市役所に入職し、行政職のかたわら大阪芸術大学通信教育部写真学科で学んだ上掛さん。現在は大学政策担当の部署で、学生と文化芸術や地域社会をつなぐ業務を担当。仕事の一環として、式典の撮影、美術館や博物館の取材、大学生対象の写真講座なども手がけているそうです。
「学び直しで成長できたことはもちろんですが、卒業後にあらためて感じるのは、学位の有無の重要性です。単なる趣味ではなく芸術大学で写真を学問として修めた証ということで、周りの見る目も変わり、仕事上でもプライベートな活動でも応援してもらいやすくなりました。学士の称号をきちんと取得しておくことは、将来的にも役立つと思います」
在学中から様々な公募展で受賞。今回は東京都写真美術館で自身の作品が展示されたことも喜びの一つといいます。
「写真を撮る人間にとっては聖地のような場所。ギャラリーとは違い、美術館での展示は選んでもらって初めて実現できることですから、感慨も大きいですね。在学中も、授業の学びと応募に向けた作品制作を行き来することが、長い修学期間を乗り切るためのモチベーションになっていました。大学でも自分でもない第三の視点から客観的に評価される機会ですし、応募や受賞を通じて未知の世界との出会いが広がるなど、公募展参加には多くのメリットがあると思います」
これまで鑑賞する側として訪れていた東京都写真美術館での作品展示が、さらなるモチベーションに
今後も行政の仕事と写真を通じた芸術活動の両方にまたがるスタイルで、自分らしく活躍していきたいと語る上掛さん。
「今回の受賞をきっかけに、カメラメーカーのキヤノンさんから活動を支援したいというお話もいただきました。機材貸出のサポートを受けて海外で撮影するなど、この出会いとご縁を活かせるような新しいことにもチャレンジしたいと考えています」